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チェンバロの装飾/ La decoration du clavecin

チェンバロは、1台1台全て鍵盤の1つ1つから、ケース、蓋、そして装飾に至るまで、全て手仕事である。

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1636年のベルギーの有名なチェンバロ製作者アンドレアス・ルッカース\チェンバロの響板

現代の多くのチェンバロ製作者も、250年ー300年前のアンティークのチェンバロのモデル、長さ、木組みなど、ミリメートルに至るところまで、研究しつくして、かつての名器の音を現代に蘇らせようと、絶えず改良している。

結局は、その製作者の腕のほかに、どんな音を良い音と聞くかの、*耳*とセンスがとても重要になってくると思う。

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アンドレアス・ルッカースのチェンバロ

その製作者自身が、昔の数多くの名器の音を知っていれば知っているほど、様々な*良い音*また、現代には失われた音を感じ取れる感受性が発達すると思う。そして、それらの経験はその製作者の楽器の*音*に大きな影響を及ばすと思う。

演奏家も同様で、できるだけ名器の*音*は知っていたほうが、それだけ自分の音の世界が広がるし、奥深くなるので、機会がある度に、見に行きたいと思っている。

先週は、2回もパリの楽器博物館で、1761年のヘムシュ(フランス製)1646年のルッカース(ベルギー製)1652年のクーシェ(ベルギー製)により、バッハのコンサートがあり、こんなコンサートが行われるのも、ここパリならではと圧巻であった。

普段、静かに展示されている楽器を実際に350年以上の歳月を経て、奏でられると言うのは、やはり驚きである。
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1640年ルッカースチェンバロ

現在、私もドイツの製作者にチェンバロを作ってもらっている最中だが、やっと、ケースと響板、そして蓋がついた時点で、来月にもパリへ運ばれてきて、装飾を始める。

チェンバロの装飾を20年も手がけ、その他にも、アンティークの家具や、宮殿の金箔の壁を修復し直したりしている、大変素敵な絵を描く方に出会った。

そのシャルルさん曰く、色も音楽のように、ハーモニー(調和)が大事だと。

ただ単に、水色や緑色を描くのではなく、花1つを描くにも、バランスが大事と。自然に咲いているバラ1つを描くにも、ただピンクを描くのではなく、微妙な色使いが全てを変えてしまうと。

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そんなシャルルさんは、色々な素敵なデザインのチェンバロを考案して、その写真を見せてもらったが、どうやら、描く時は、どこからか、そのモチーフのアイデアがふ~っと浮かんでくるらしい。

打ち合わせの時点では、どのような色やモチーフでとか、細部まで考えるらしいが、その後、一度その案を寝かせて、何かを見たときに、ふとアイデアが浮かんでくるという。

また、1ライン描き始めただけで、違う!と瞬時に感じる時は、時間の無駄と言って、描かないらしい。

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シャルルさんの描いた響板のローズの部分

*まるで、音楽のようですね。*と言うと、そうだね。と言っていた。待ち合わせ場所に行ったら、先に着いていたので、待ちましたか?というと、

いや~。僕はいつも見るものが沢山あるから、全然退屈しないんだよ。といって、パレ・ロワイヤルの建築の柱や、コメディー・フランセーズの前の噴水の曲線ラインを指して言った。

彼が、どんな装飾を私のチェンバロにしてくれるのか、今からとても楽しみである。