ヴェネツィアへの旅 Vol.3/ Le voyage a Venise Vol.3
6年前に初めてヴェネツィアへ行ったとき、確か、サン・マルコ寺院から散歩をしていた時に、見つけた、おじいさんの経営する、こだわりの額縁屋さんで、記念に鏡を買った。
1つは、当時私が住んでいたボストンへ持ち帰り、もう1つの小さいけれど、鏡に花の彫りがあしらわれた方は、一緒に旅行していた母が東京の実家に持ち帰った。
それ以来、愛用していたのだが、去年アムステルダムに住んでいたときに、不意にスタンドランプが倒れ、それと共に、この鏡も、すごい音と共に、壊れてしまった。
それ以来ボロボロに壊れてしまった鏡は、悲しくも、修復してくれる人が見つからないまま、押入れの奥に閉まってあった。
しかし、今回突然ヴェネツィアに行くことになり、もしかして・・・・・とあのお店にまたたどり着けるかも分からぬまま、半信半疑で荷物に詰め込み、出発前に探しても見つからなかった住所がもしかして、日本に持ち帰った鏡の裏にでもあったら・・・・と電話書けたら、私の鏡には無かった、ポストカードが付いていた!
ということで、住所と電話番号を控え、ヴェネツィアに付いたのだが、住所というのが、*ヴェネツィア式*で、とても分かりにくい。
ただでさえ、入り組んでいる、1人しか通れないような小道、ぐるぐると迷路のような道など、沢山あり、この鏡のお店は大きな教会の隣だったような・・・・としか、記憶がないのである。
すると、偶然に入った、ヴェネツィアに古くから伝わる手法で作る、万華鏡のような模様の紙屋さんに、この住所とお店知ってますか?と訪ねたところ、親切なことに電話をしてくれた。
もしかして、もうつぶれているかも知れない・・・・と思った、頼りない6年前の電話番号だったが、通じたようで、すぐにアカデミア橋の近くのここの教会の隣だよ。と教えてくれた。
お礼を述べて、早速行ってみたら、あっ!?!何か見覚えのある・・・・
と見ると、あのおじいちゃんが!!
ということで、この鏡を6年前に買って、ヴェネツィアーボストンーアムステルダムーパリを経て、また修復しにヴェネツィアに戻ってきました。もう1つは、東京で大事に使っています。と伝えたら、おじいちゃんの表情もほころび、翌日の出発にも関らず、1日仕上げをしてくれた。
翌日、行ってみると、鏡もきれいに入れ替え、額縁もきれいに塗られてある。聞くと、これは500年前と同じ製法で作っているとのこと。
額縁には、金箔をはってあるのだが、それが、キンキラしているのでなく、やや削れて、古びた良い感じに仕上がっている。
おじいちゃんも、クリスマスにパリに行ったんだよ。とお店を手伝っている息子さんと、ヴェネツィア訛りのフランス語で一生懸命話してくれた。
仲良くなった所で、お支払いをしようとしたら、じゃあ、安くしてあげる。と値段も友達価格になってしまった!さすが、イタリア。値段はあるようで、無いのが現実。こういうことは日常茶飯事のようだ。
なんだか、イタリア人の暖かさに触れた気がして、では、また。と言って、別れを告げた。
旅を通して、勿論歴史や絵画に触れるのも大きな喜びだが、こうして、現地の人々とのコミュニケーションが更に、良い思い出を添えてくれる。今回は、このおじいちゃんとの嬉しい再会が心に残った。