チェンバロという楽器/ le Clavecin/Harpsichord
1台1台全て手作りなので、鍵盤や、装飾、そして音色が違うというのも、チェンバロの魅力かもしれない。
同じ製作者や地方が近いと(ドイツ・ベルギーとオランダ・フランス・イタリア・イギリスと分類される)、音色もどういう特徴か、それぞれ大まかに予想はできるが、やはり*百聞は一見にしかず*で、それは、250年前から生きている人に会いに行くような、どきどきする感覚である。
イタリア製のチェンバロ。ルーブル美術館、別館にて開催された、楽器店の際に実際に展示され、演奏することができた。***An original italian harpsichord exhibited at the musee du Louvre.
私がチェンバロに出会ってから、早くも10年以上が過ぎたが、始めは黒いピアノに慣れ親しんでいた為、チェンバロの良さがあまり分からなかった。しかし、無意識に何かにとても魅かれていた。
実際に、音楽家としてチェンバロとう楽器で表現するようになり、とても貴重なことを日々、楽器から学ぶ。
チェンバロは、小さな鳥の羽を削って作る、爪のようなもので、弦をはじくというシンプルな構造である。
後に、ピアノが発明され、ペダルやハンマーで弦を叩くという構造になり、音の強弱に幅が生まれようようになった。
それに対し、チェンバロは強く弾こうが、弱く弾こうが、同じ音量で、叩けば叩くほど音は汚くなり、数ミリの鍵盤を指先で弾く意外の無駄な力は不要である。
しかし、チェンバロに接する時、力まないで、素直に自分と向き合うと、何のテンションもなく、す~~っと自分のイメージしている音が表現される気がする。
18世紀のフランス製チェンバロをたまに弾く機会があるのだが、その楽器がなぜ、名器と言われるのかは、有名なメーカーということでなく、弾いてみて実感する。
自分のイメージした音や、少し注意深く耳で聞くだけで、次の瞬間にはチェンバロからその音が、まるで3Dの様に、立体的に浮き立つのである。
こんな素晴らしい楽器は、現代の製作家がどんなに逆立ちして、頑張って、昔のチェンバロを再現してもかなわない名器である。
また、チェンバロの木自体が、200年以上経つと、よく乾燥していて響くのである。ヨーロッパには、未だに15世紀ー18世紀に建てられた、修道院などの建築があるが、それらの建物が何かの理由で取り壊される時は、楽器製作者は、駆けつけて古い木を手に入れたりする。
チェンバロは木でできている為、古いそういった素材を使うとやはり良い楽器ができるようで、現代製作者は昔のデータを集め、研究しながら、常に*美しい音*を求めてやまない。