面白かったのは、ローザンヌのフォルテピアノ展示会でフォルテピアノ製作家・修復家の為に開かれた、クリストファー・クラークによりアトリエ(勉強会)です。

私も見学させて貰ったのですが、古いピアノを修復する為にモーツアルト、ショパン時代のピアノメーカーが実際に使っていた道具も再現して作って、実際に今フォルテピアノを修復する際にこの機械を使いながら作業をしているそうです。

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フォルテピアノのハンマーは現代のモダンピアノのハンマーよりもずっと小さく、素材なども天然の皮など様々で音色も繊細に変化する為、製作家は使用する素材に大変こだわります。

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現代のフォルテピアノの製作家として一番の腕利きと言われいるイギリス人(フランス在住)のクリストファー・クラークが再現して作った昔のハンマーのフェルトを付ける機械。

足にペダルがあり、そのペダルを押すと数キロ分の圧縮する重さがハンマーの部分にかかり、接着剤を付けてフェルトを付けます。接着剤も昔は全て天然素材のにかわを使用していました。今でも楽器制作、ヴァイオリンなどの板を合わせる時に使用されています。

にかわは牛の皮や骨から作られ、短時間で接着でき木材に良くなじみます。修理の時には熱を加えると容易にはがせるので楽器制作に今でも良くしようされています。

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また、チェンバロの響板(弦が張ってある楽器の内側)に描かれている絵等も、昔は絵の具の粉と”卵の黄身”を混ぜ合わせて描いていました。

今の油絵の具よりも、仕上がりがふわっと軽い感じでべたっとしていなくエレガントな印象です。昔の人の知恵は、現代の私達が忘れた技術や工夫がもり沢山の為、多くの製作家は修復されていないままのチェンバロ等を研究し、どういう素材とテクニックで“幻の音”を作りだしたか知ろうと多くのコレクションや美術館を回ったりしています。

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Mozartの持っていた5オクターブの現在ザルツブルクのモーツァルト博物館に保存されているフォルテピアノのコピー。Robert Brown作。

この楽器は、本当に繊細で指先のミリの感覚をキャッチして音色に表現できる、数少ない私がとても気に行ったフォルテピアノです。

d0070113_22464915.jpgMozartのピアノのコピー(ワルターモデル)しっぽの方の形がユニークです。いわゆるキラキラっとした音というより、“古い”何とも言えない音色を持っています。派手なモダンピアノが好きな人には物足りない・・・という感じがするかもしれませんが、チェンバロなど古い音に慣れている人には身近に感じるかもしれません。

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6オクターブのRosenbergerのコピー(Robert Brown作)。この間イギリスのフィンチコックスで見たRosenbergerとあまり変わらないモデルです。オリジナルに比べてかなり明るい、新しい音がします。

6オクターブあると、モーツァルト、ベートーベンの後期、1曲シューベルトなどをプログラムに入れたい時にも1台で弾けて便利ですが、モデル的には本当はグラーフなどの他のモデルがあれば理想ですが、現実的にコンサートで1曲の為に2台目を用意するというのは大変なので、そういう時には便利かもしれませんね。

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おまけ。デザートに食べたプロフィトロールがおいしかった!シュ―クリームの中にバニラ、カフェ、いちご、タピオカのアイスが入っていて、暖かいホットショコラをかけて食べます。あ~~幸せ!

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8月にミラノでお会いしたアンドレア・レステッリとチェンバロ製作者のダビット・レイ

ダビットの楽器は最近知ったのですが、クリストフ・ルセの楽器がモントンの音楽祭にわざわざパリから車で7,8時間?かけて運ばれたのですが、本当に良く鳴ります!

良いチェンバロとはこんなに鳴るものか!と思うくらい。家に帰って自分の楽器を弾いたら何か鳴らない様な気がしてしまうほどダビットの楽器は素晴らしいですね。

今週も、彼の他の楽器を持っているムッシューのお宅へ伺い、弾かせて貰いました。鍵盤、響板から、装飾、金箔を張るのも全部1人でやるので1台に1年半ー2年かかるそうで、今までに20台くらい作ったそうですが、本当に名器ですね。
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ということで、いつかMOzart時代のフォルテピアノ、オリジナルのプレイエルやブロードウッドのピアノ、そしてオリジナルのチェンバロが朝目を覚めて家にあったら?!なんて思いますが、そんなのは夢のようですね。

ヨーロッパにはそういうコレクターの方で、チェンバロやフォルテピアノ奏者でなくて趣味で嗜む感じだけれど、楽器が沢山・・・という方が多いみたいです。そういうインテリな方達で寛容な場合はプライベートのコンサートや録音に貸し出したりもしている方達もいらっしゃる様で、色々な素晴らしい名器の音がCDとして残っています。
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街もゆっくりお散歩した所ですぐに3台の1840年代のピアノによりコンサートがありました。

スイスのピアニストJean-Jacques Dunkiさんが、1台ずつ楽器の特徴などを説明し、ピアノの制作された同時期に作曲されたピアノ曲を3台で弾き分けてコンサートが行いました。
チューリッヒかどこかので音楽院の先生だそうで、モダンピアノと同時に常に古いフォルテピアノにも興味がありずっと弾いているようで、今度チェリストのクリストフ・コワン氏とレコーデイングする予定だそうです。
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ここまで状態の良い、修復後のコンサートで使用できるグランドピアノが集まるというのは大変な贅沢です。
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左からPape Paris 1842年、真ん中Pleyel Paris 1839年、右Erard Paris 1850年

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Pape Paris 1842年,
多くの人がPapeのグランドピアノを見るのが初めてということで、スクウェアピアノ(テーブルのような平たい長方形のピアノ)を多く生産していたPapeの貴重なグランドピアノです。

タッチもとても浅く、今のモダンピアノに比べると数ミリくらい軽いのではないでしょうか。

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Pleyel Paris 1839年
ショパンが持っていた1846年pleyelのピアノと3年違いのモデルです。ショパンのピアノは7月イギリス旅行・コブコレクションのページよりご覧いただけます。

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こちらは、今回全て企画したローザンヌ音楽院のフォルテピアノ科教授Pierre Goy氏。

彼自身10個近くのフォルテピアノのコレクションを持っているそうで、そのうちのPleyel3台を運びこみレクチャーコンサートが行われました。

左からPleyel 1855年 グランドピアノ、Pleyelテーブルピアノ1832年と1844年。Peyel3台も持っているなんて!なんて贅沢でしょう。そして1台ずつやはりそれぞれの違った音色とタッチで曲により聴き比べられ、大変面白かったです。

1曲は2台ピアノの曲が演奏され、同じPleyelの甘美な音色が混じり合い、なおかつそれぞれの違いを楽しめました。

3階の展示場には1部屋ずつ違った現代のフォルテピアノ製作家や、修復科の部屋になっていて、自由に出入りしてピアノを弾いたり、製作家と詳細など話すことができて、弾き比べをするのがとても興味深かったです。なかなか、ここまで多くの楽器が1つの場所に集まることがない為、貴重な機会です。

そうでなければ、ザルツブルクに住む製作家、ミラノの製作家、ベルギーの製作家・・・と楽器製作者の旅を数日かけてしなければいけないのと、記憶の中にある音とタッチを比べるのは中々大変なので。
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こちらは別のOlivier fadini氏(パリ在住)が修復し終わったばかりのオリジナルPleyelのグランドピアノ。

面白かったのは、ショパンがパリに18年間在住していた間、良き友人、同じ作曲仲間として交流のあったカルク・ブレンナー(1785-1849年)が開発した指先だけを動かして練習するために発明されたカイロプラストという機械の図面の載っている古書から、Olivierが実際にその機会を作って日本人のピアニスト奥山 彩さんがデモンストレーションをしてくれました。

クレメンテイの氏でもあったカルクブレンナーは、もともとドイツ人ですがパリのコンセルバトワールに来て、ロマン派以前のピアニストとしてパリの楽壇で大変な人気と名声を持っていたそうです。

そして、まさにカルクブレンナーの活躍した時期はプレイエルのピアノが発展、改良された時期で、彼は生徒にできるだけ指を動かして鍛えるメソードを教えていたそうで、その為にこの木の練習用の道具を制作して生徒に売っていたそうです。

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これが、練習様機械(木製)の図面の載った古書。

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オリビエが実際にこの練習用機械を再現して、プレイエルのピアノに取り付け、彩さんが弾いてデモンストレーションをしてくれました。
腕の部分を木のバーに載せるので、できるだけ腕を動かさず、指の筋肉を鍛えるということだそうです。弾きにくい様ですが、どちらかというとチェンバロ的な指のみ動かす奏法に重点が置かれているのが面白いですね。

チェンバロはタッチが現代のピアノよりも遥かに軽い為、不必要に腕の重みや動きを加える必要が全くなく、逆に叩くと音がつぶれて響きません。

ロマン派のプレイエルのグランドピアノの頃からピアノも大きくなり鍵盤の重さも増え、ショパン以降ヴィルトゥオーゾな曲が盛んになり、段々体も使って弾く演奏法に変わっていったのかもしれませんが、ショパン自身もか病弱で痩せていた為、グランドピアノを弾く体力があまりなく、大きなコンサートホールよりも伯爵などのサロン(部屋)の少人数を対象に演奏したことを好んだそうです。

ショパンはプレイエルのグランドピアノをパリ自宅、またマヨルカ島(ジョルジュ・サンドと付き合っていた頃よく行った別荘)にはプレイエルのアップライト型のピア二ーノを持っており、有名な24のプレリュードなどの名曲を生み出しましたが、体力のない日はグランドピアノは疲れるのでピア二ーノを好んでいたと言われています。

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Olivierの部屋に展示されていた修復されたオリジナルのpleyelピア二ーノ。手前にシューマンとクララシューマンの写真が飾ってある様に、写真に写っているクララが弾いているピアノとほぼ同じモデル。

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ピアノの譜面台にある右側のデッサンを良く見ると、このピア二ーノと同じラインが描かれています。
ショパンの良い友達で今でもサンジェルマンにアトリエが博物館として残っている、画家ドラクロワ(1798–1863) が描いたショパンとジョルジュサンドの肖像画のデッサンに、このピア二ーノの猫足の部分が描かれており、ショパンがこのピア二ーノと同じモデルのピアノを持っていた事が推測されます。

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ドラクロワ

ドラクロワが実際にこの後に描いた2人の油絵の肖像画は、いつ誰によって破られたかは謎のままだけれど、ショパンとドラクロワがその後別れたことからか、2枚の絵も別々になりショパンの肖像画はルーブル美術館に所蔵されている。

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1838年。ショパン像。ルーブル美術家所蔵。

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ジョルジュサンド像。コペンハーゲン、デンマーク美術館所蔵。左にピアノの部分が描かれている。これがPleyelのピア二ーノと推測される。

こうして、絵画や楽器と歴史の謎解き!?をするのは面白いですね。
段々と頭の中でそのショパンが生きていた頃のパリの社交やピアノ事情などがつながっていきます。そして何よりも素晴らしいというか感激してしまうのは、今でもドラクロワのアトリエやショパンが最後に住んでいたヴァンドーム広場にはアパートがあるということです。

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ドラクロワの住んでいたアトリエ前の通り

去年までサンジェルマン近くに住んでいた方が、”今日アパートの横にあるプレートを見たら、この建物にジョルジュ・サンドが住んでいた”って書いてあったんです!”と言っていました。
それは、ビックリですよね。ということは、そこにドラクロワやショパンもカフェをしに遊びに来たかも?!・・・

なんて考えるとパリは歴史が今も街の中で共存しているのが日本人の私にはびっくりしてしまいます。
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ドラクロワが住んでいたアトリエ。太陽の光ができるだけ入る様にお庭に面して大きな窓があります。

東京は残念ながら空襲などでほとんどが焼けてしまいましたが、ある日家の横を見たら徳川家が住んでいた・・・なんてことが分かったらそれはびっくりしますよね~~。
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ボローニャから電車で2時間ほどでミラノに着きます。1時間の新幹線のような高速列車から3時間の鈍行まで選べるので楽です。

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ミラノ駅から2駅の場所にアトリエを持つAndrea Restelliさんを訪ねました。メールで流暢な英語で対応して頂き、イタリア人なのに珍しいな~と思いましたが、実際に会ってみるととても気さくで奥様もとても素敵な方でした。

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アンドレアさんはとても人気の製作家の為、今24人のWaiting Listで今注文しても4,5年後まで時間がかかるそうです。

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面白いのが、この型は歯医者さんで歯型を取る素材を使って、18世紀のオリジナルピアノから形を取り、奥様が製作しているとのことです。ブロンズ製の上に金箔を張ってあるそうです

フォルテピアノの製作者を探しているので、とにかく多くの製作家に実際に会い、楽器を弾く事が一番だと思い、今回ちょうどイタリアへ行ったの会いに行きました。

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Grafモデル

アンドレアさんはチェンバロ、フォルテピアノ、クラヴィコード、オルガンと多種多様の鍵盤楽器を作れる珍しい製作家です。

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中のPedalの構造。ペダルが5個くらいあるので複雑です。

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これは1800年頃のドイツ製のオリジナルピアノ。円い装飾が違う色の木で1つずつされています。面白いですね。

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ハンマー。今のピアノに比べてずっとシンプルで小さいです。

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響板の裏側。魚のうろこのようになっていて面白いですね。

ミラノ1泊2日を過ごして、夜の飛行機でパリへ戻ってきました。
おかしいのはモントンーパリまでの電車よりもミラノーパリの方が半額の料金で何と5000円!考えられませんね。ちょっとナイスなデイナーと飛行機代が一緒の便利な時代になりましたね。

しばらくはパリでゆっくりします。バカンスで留守にしていたパリジャンも段々と戻ってきて町に活気が戻り始めつつあります。

皆さんの夏はいかがでしたか。どうぞ季節の変わり目お体にお気をつけて下さい。
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あ~~~~~終わった~~~!

というのが正直な今の気持ちです。

本当に大変でしたね。
昨日、無事にブリュッセルの楽器博物館で2台のフォルテピアノでの本番が終わりましたが、
まあ何とも大曲ばかりをプログラムに入れてしまって、一番大変だったのは誰でもない自分自身。
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自業自得といえばそれまでですが、ピアノのレパートリーは本当に弾きこなすのに時間がかかります。
そういった意味でも色々な反省点があり今後に役立てれればと思います。
少なくとも、次回ピアノの本番の企画をする時にプログラムはもの凄く慎重に決めると思います。

ただでさえ、この2ヵ月前からオーケストラや室内楽のコンサートが立て続けだった疲労がたたり、ピアノの本番はチェンバロに比べて3-5倍肉体疲労もすることを実感しました。

その為、アフターケアというかゆっくり休んで回復するのも大事。
1回目のメンデルスゾーン、ベートーベンのリサイタルは良く寝てきちんと食べて、4日前からフォルテピアノ漬けになりタッチや音色もかなり馴染んだ状態でそのまま本番に臨めたため、集中力が最後まで続いたようです。

しかし、昨日は休むべき3日に疲れを取らなかったのと、本番前に睡眠・食事共にあまりに少ない量で本番の日をどうやら顔色も普段に比べて白っぽい・・・と後で言われてしまいました。ご飯も食べる時間がないくらい限定された博物館の練習に追われてしまったのですが、取るべき時間にきちんと体調を整えるのもとても大事だと学びました。

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やはり音を生み出す、リサイタルのプログラムを弾きとおすのは、結構な体力と集中力を要するので、エネルギーがなければ無理なのに、今回はコンデイションが万全ではなかったですね。

その為、今思うと弾いている最中に小さなミスがあっても、元気な時や精神的に安定している時は気にならないかもしれませんが、昨日は、心が動揺してしまい、そうなると小さなミスの後にまたミス・・・と演奏に出てしまいます。

まあ、フィギュアスケートなどだと分かりやすいですが、やはりここぞ!という決めてのジャンプの時などに一瞬の心の隙や準備が0.5秒でも遅いと、もうそれは決まらない分けです。

チェンバロとピアノは明らかに音量の差もありますが、曲の長さ、音の多さ、集中するポイントが違うんですね。これは、やはりチェンバロの本番に慣れているので、久しぶりにピアノの大曲オンパレードを今回弾いてみて大学の頃を思い出しました。

そういえば・・・10年前はがむしゃらに8時間でも弾いていたけど、それだけの体力もあったなと。
でも、音楽的にはよく理解してないのにただ指だけ回っていた気もするのですが。

ということで、私の中ではピアノへのカムバックはまだまだの道のりです。
この2年リハビリと称してチェンバロタッチからどこまでピアノを取り戻せるか・・と実験中ですが。

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そして面白いのは、本番など特別な場になると、10年前にあったピアノの癖が出てくる。
体の記憶というのはすごいですね。

勿論、自分では無意識なのですが、ショパン時代のピアノはかなり大きいので弾いている時に、必要ないのに腕までかなり使って弾くわけです。

このピアノは本当に素晴らしい音質で繊細なので、楽器の音を聞いてればどれくらいの加減やタッチで弾けば一番響くのか、叩いても汚い音になるだけで、響きをかえってつぶすことにもなり得るのに、体が気がついたら10年前のモダンピアノのタッチに戻っているわけです。

そして録音して客観的に聞くと、やはりピアノの限界に近いような音。叩きすぎているわけです。
チェンバロでもそうですが、楽器の一番自然に鳴ってくれる以上の力を加えてもきれいに響きません。汚い音になるだけです。心も気負わないで、楽器と対話すると響いてくれる。

そんなことをこの3日間色々試して実際に本番でも弾いたのですが、やはり本番にしかない緊張感、空気というのがあり、その中でいかに呼吸を落ちつけて心の中で思い描いている音を表現するか・・・

なのですが、言うのは簡単、やるのは大変。
そして、昨日は呼吸は・・・気がついたら犬みたいにかなり上がってましたね。(苦笑。勿論、本番中は笑える余裕などないからそんなことになっているのですが!)

ということは、勿論音の深さもないでしょうし・・・
まだ録音は聞いていないのですが、また数日後に客観的に聞くと誰に何を言われるよりもショック!を受けたり、自分の見たくない姿もありありと見るわけで、それを受け入れ、まだまだ修行!ということで続くわけです・・・

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ショパンの愛したフランス製プレイエル社のフォルテピアノ 1843年。これでショパンとフランクを演奏しました。

何はともあれ、昨晩家に戻り本当に*どさっ!*という音を立てて肩の荷が下りた気がしました。

まだまだ、7月半ばまでコンサートが続くのですが、取り合えず山場は越えたでしょうか。この1か月半は本当に目まぐるしかったですが、その中のテンポに慣れるとやはりその中で色々とこなせていくのでしょうか。

本当に私はしょっちゅうツアーで出かけて弾いてる友人たちや長時間のレパートリーを顔色変えずに弾きこなせてしまうピアニストの友達を心から尊敬しますね。
気力、体力、そして経験が伴えばどこで力を抜いてどこできちんと決めるか加減が分かると思いますが、私はかなり不器用なので色々な失敗や経験をして学ぶタイプです。

ということで、今回もチェンバリストが憧れの曲を弾いてみました・・・
みたいになってしまいましたが、あの素晴らしいショパンやフランク、そしてモーツアルトの世界に改めて触れられたのは本当に感謝・感激です。

来週からはオーケストラとモーツァルトのシンフォニー40番とテノールの歌手とラモーやグルックのオペラのアリアの抜粋のリハーサルとドイツの2回のコンサートでWurzwurgに行ってきます。

モーツアルトが幸せな時代を過ごした素敵な中世の町だということで初めて訪れるのが楽しみです。
1日オフ日があるので、町を散策するのが楽しみです。

聞いてみるとN.Yやブリュッセルにいる音楽仲間もみんなツアーで行くコンサートよりもガイドブックを広げてどこに行こうかな~~という方が楽しみだったりするみたいです。(笑)
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こんばんは。

何だかこの10日ほどパリなのに梅雨の様な・・・・・・お天気が続いています。
冬は湿度が38%まで落ちるのが平均なのですが、51%もあります。

チェンバロの保存の為にいつも温度計&湿度計は楽器の横に置いてあり、加湿器で冬は調整します。

さて、昨日・今日と立て続けに2つフォルテピアノでの本番があり、終わって一息しているところです。

昨日は、2つフォルテピアノでベートーベンのヴァイオリンソナタ“春”とショパンのソナタ2番。
そして昨日それが終わってすぐにブリュッセルに電車で行き、今朝は楽器博物館の貴重な楽器で練習。来週リサイタルがあるので楽器に慣れるためです。

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まるでストラディヴァリウスのピアノ版みたいな名器!プレイエル1843年。素晴らしい音色です。

博物館が使用できる時間が限られている為モーツァルトのソナタとショパンのソナタを練習した後すぐにシューベルトのピアノトリオの本番。

頭の中がくるくるしそうでしたが、それよりも腕がそれぞれの楽器に慣れるまで15分くらいは最低必要なので、頭の切り替えだけでなく、腕やタッチを順応させるのが大変ですね。

チェンバロの場合は本番でも頭の中の集中力だけで、肉体的な労力はほとんどない為、脳と指先がピピッとつながってやりたいことがすぐに反応するのですが、大きなフォルテピアノの場合はまだまだ肉体的に大変な部分もあり、体が一生懸命にピアノに順応しながら弾いている・・・という労力を感じます。

勿論、もっと自然に“無意識”に腕が反応するのうになるのが一番ですが、まだリハビリ中といったところでしょうか。ピアノを弾かなくなって10年の漬けは大きいです!

今(自称)リハビリ開始して2年目ですが、まあやっと慣れてきたという感じでしょうか。でも、これは誰の為でもなく自分の為に“今”しなければ、一生ピアノを弾かないかも?!と思ったので始めたので良かったと思います。

やろう!と思ったその時がやり時?!ではないでしょうか。
ハーバードのMedical スクールやサマースクールでも、1度ビジネスマンだった人がやっぱりお医者さんになる!弁護士になる!と40歳過ぎで新たな人生に挑戦している姿は珍しくなく・・・

アメリカではその人が *今やりたいこと*と思ったら年齢なんか関係ないんだな。と思うほどぶっ飛んでいる人が多かったです。ハーバードの科学や法学、医学専攻の学生なのに音楽家並にヴァイオリンが上手だったり、才能豊かな人がこんなに居るんだなと目から鱗でした。

話を戻しますが、シューベルトのトリオは、まあとにかく凄い集中力を必要としました。そして腕や体も使わないと楽器が鳴らないので終わったら何だか左の腕のすじが突っ張っていて、*変な弾き方したかな?無理したかな?*と体がシグナルを出してました。

来週の本番ではこういうことがないような、もっと体の中から呼吸を上手くフレーズと合わせて無意識に使えたら自然な流れの音楽になると思いますが。

まあ、3,4日で変わるようなことではないもっと根本的なことですが・・・

ところで、友人にデジタルのとても手軽な最近日本でも数種類出ている録音器を借りたのですが、すごい万能!

軽くて小さいのに音質も良く、コンピューターにそのまま落とせるので自分の演奏がデータとして残せるし、またすぐにも消せる(!)ので気楽に普段の自分のチェックに使えそうです。今回の本番には間に合いませんでしたが今度日本で買ってこようと思ってます。

早速、昨日と今日の自分の演奏を聞いたのですが、やっぱり弾いている時と違うことが色々よく分かります。


当たり前ですが第3者として客観的に見えます。
こういう゛耳”が弾いてる時にもっと必要だなあと思いました。

自分ではやっているつもり。
でも、イメージだけで音に出ていない。現実に表れていない。
でも、現実は違うらしい・・・と気が付けばすぐに変化できます。
しかし、気が付かなければ゛知らぬが仏”。

しかし、きっと普段の生活からも ゛こうしているつもり”、゛こう伝えたつもり”、という“つもり”でも現実は違うことも多々あるかもしれません。

普通の出来事であれば゛自分がこう言ったら相手はどう思うのか”など相手の立場に立って考えたりすると少し客観的に見えますが、゛音”はまさにその場で生まれて消えていくわけで、その前にもその後にも変えられなく、゛その時”の自分の判断がとても大事ですね。

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パリ、サンスルピス教会。ダ・ビンチコードにも出てきますが、女優のカトリーヌ・ドヌーブもこの近所にお住いとか。(内容と全然関係ないですが)

自分が焦ればテンポも呼吸も早くなり、客観的に見えなくなる。普段では早くて弾けないテンポでもなぜか指が勝手に回っていってします。
きっと前のめりになって歩いている人みたいに?弾いてるのでしょうか?想像すると可笑しいですが。

ので、ちょっと落ち着けるところは、ふと冷静になる為に姿勢をちょっと後ろに持って行ってもう少し空間を感じれるようにしたりしますが、それもつかの間だったりして・・・(苦笑)

本当にまだまだ修行ですね。
でも、こうして多くの名曲に触れられるのは大きな喜びですが、これは終わってから言えること?

(弾きたい曲)だったはずが、いつの間にかすごいプレッシャーで(弾かないといけない)と思ってたりします。
そうするといい音も出ないですよね。

録音を聞いても自分が迷いながら弾いている音、本番だからいい意味であきらめてLet`s Go!みたいな時は何だか流れでうまくいったり、不思議ですね。

だから、精神状態も本当に鏡のように゛音”に出ますね、
ということで、反省モードでした。(笑)

来週は2時間のピアノリサイタル、その後は再びチェンバロでオーケストラとドイツツアーに行く予定です。
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今日は、日帰りでまたもやブリュッセルに行ってシューベルトのピアノトリオのリハーサルをしてきました。
今週の木曜日に本番なのですが、なかなかの大曲!

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何と4楽章通すだけで50分もかかるんです。繰り返しなしで!

1827年にシューベルトがプライベートコンサート(友人の結婚の為に書いたらしいです)で初演した模様をシューベルトの友人が後日、日記に書いているのですが 
*とても長い・・・・のでカットの必然性も出てくるかも・・・と書いてあります。*

シューベルトは、テーマを演奏者がどのように演奏するか、テンポや全体のバランスにもよってカットは必要、必要でない場合もある・・・と書いています。

ちょうどこの年、出版社に何か曲を出版しませんか?というオファーに対してシューベルトがこの曲を送ったのですが、このトリオだけ断られた!
ということから2番目に送った出版社から初版が出版されて、当時では大量の1100部が刷られて大変好評だったということです。

今でも、モダンの楽譜ではヘンレ版はすでに省略済みのヴァージョンで、ベーレンライターだとここから*省略*とマークと記載されているので演奏者が自分の判断で選べます。

それにしてもこんなに長い室内楽曲は・・・他に多分チャイコフスキーの偉大なる芸術家の為の・・・くらいでしょうか。シューベルトのピアノクインテット*ます*も結構長いですね。
でも、音楽的に深いというか掴みにくい!

そして転調がまるで予期しない所に飛んでいく!ので油断禁物。ピアノパートはむちゃくちゃ!難しいです。(私にとって)

チェンバリストにとってこの曲を弾くのは・・・そうですねえ。ハードルをやってた人が棒高跳びに挑戦するような・・・そんな気分でしょうか。(苦笑)でも、やるならやっちゃえ!とまあ一生に1回かもしれませんが、シューベルト時代のピアノで演奏させて頂きます。
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ピアニストの内田光子は、*死ぬ前に聞くならシューベルトがいい・・・*とおっしゃってましたね。あんなに素晴らしいモーツァルト弾きの方でも最後に聞きたいのは心から愛してるシューベルトなのだそうです。

フォルテピアノで演奏する際には、楽器がもうすでに決まっている場合(限定される場合)、その時代に合った曲を選んで演奏します。

または、その逆。こういうレパートリーを演奏したいからこのフォルテピアノが必要・・・となります。

どっちも贅沢な話ですが、チェンバロが1750年くらいまで栄えて、フォルテピアノ(強弱が表現できるようになり)モーツァルトやハイドン、すでにバッハの子供たちの世代もこの*新しい*発明されたばかりの鍵盤楽器の為にチェンバロ曲とは全く作風の違うソナタなどを作曲し始めました。

モーツァルト時代~現代のピアノまで、まるで馬車~スポーツカーに変化するくらいの段階を経ています。
その為、モーツァルト、ベートーベン初期までは同じピアノでもベートーベン中期からは鍵盤が足りない!為、もうちょっと後記のピアノが必要です。

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イギリス製ブロードウッド1794年。後に6オクターブ半を開発した際に数か月かけてロンドンからウイーンに居るベートーベンにプレゼントをして触発され新しい作風のソナタを作曲した。

そして、シューベルト、メンデルスゾーンのウイーン系の楽器と同じ時代にイギリス、フランスでもそれぞれのピアノが発明され、ショパンやデュセック、クレメンティなどピアノに触発されながら自分の音楽のスタイルを築いていきました。

これらのピアノで実際にそれぞれピッタリの作曲家の曲を弾くと、やはり楽器からとても多くのことを教えてもらいます。アメリカにも60台くらい古いピアノを集めて修復し、自宅に博物館まで作ってしまった御夫婦はコンサートなども企画していますが、もうそれはそれは考えられない贅沢!!
リストはこれ、ブラームスはあっち、ショパンはあのピアノ・・・と1人1人弾き分けれるほど楽器がありました。

私は感覚人間なので本を読んでも頭に入らないのですが、*百聞は一見にしかず*とはまさにこのことで、
弾くと*音*を通して自分の感覚が色々なものを感じて、タッチやイマジネーションも普段とは全く違うインスピレーションを貰ったりします。

これは、オリジナルの350年前のチェンバロを弾いてもそうですが、もうその歴史というか、数世紀隔てて今も*音*という振動を鳴らす木の楽器ですから、ゾゾ~~~~~っと鳥肌の立つような低音だったり、本当に音は小さくても心に響くような、今まで聞いたことのないような、自分の*知っている*音のイメージを根本から覆すような・・・・音に出会ったりします。

それはやっぱり現在の楽器製作者の方が一生懸命、、昔の楽器を研究して作るのですが新しい音がします。木も乾燥していないと鳴らないのでヨーロッパの製作者は17,18世紀の古い建物が壊されたりすると、すごい勢いで*木*を探しに行くみたいです。そうして集めた貴重な(17世紀の木)を使ってチェンバロの音の要である響板に使用したりします。やはり、それは1年前に倒した木を業務用ドライヤーみたいなのを使用して無理やり乾燥して完成するチェンバロとの音は違うわけです。

木はずっと呼吸をしていますから、季節でも収縮が変化します。

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数年前にお伺いしたノルマンデイーのシャトーに住んでいらっしゃるコレクター兼チェンバリストの方のお宅には、有名な世界に3台しか現存しないチェンバロの1台をお持ちですが、その他にも本当に貴重な楽器があります。

17、18世紀にヨーロッパで流行した*シンノワズリ*(中国風の模様)はベルサイユ宮殿でも東方への憧れや、そんなに遠くの国のものを持っているという一種の富の象徴でした。

このコレクターの方のお持ちの小さなスピネット(長方形の小さな鍵盤楽器)が置かれている部屋は、なんと壁紙もシンノワズリ!! 御部屋のインテリアも楽器に合わせているなんて!と驚嘆したのを覚えています。

来週は、ブリュッセルの楽器博物館のショパンの愛したプレイエルという素晴らしい名器(1843年)でショパンのソナタやフランクのヴァイオリンソナタのリサイタルがあるので、また5日ほどブリュッセルに行ってこもって練習です。

でも、こういった素晴らしい楽器に触れられるのは本当に素晴らしいインスピレーションの源なので、どこでも何のその~~~っとオタクな人たちは(私はまだまだです。笑)飛んでいきます。

予定よりかなり長くなってしまいましたが・・・
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楽器との出会いは、まるで人との出会いに似ているような気がします。

何千、何万とある楽器の中から一生に出会う楽器も限られているでしょうし、ましてや自分の手元に来るというのは、運みたいなもんでしょうか・・・

こんなことを感じたのは1か月前に1822年のイギリス製のブロードウッドというスクウェアピアノが来たからです。

5月、6月はフォルテピアノ(古いピアノ)での本番がある為、それに向けてモーツァルト、ベートーベン、シューベルト、メンデルスゾーン、ショパン、フランクの大曲を並行して仕上げないといけないので、どうしても家にピアノがないとキツイ!

ということになり、知人のチェンバロ修復家のアトリエに行って秋に修復したばかりのこのピアノで練習させて貰いに行ったりしました。

その時、彼は17世紀のアンテイークチェンバロを修復していて3週間後にお披露目コンサートがあるのに間に合わない!と明けても暮れてもそのチェンバロにかかりっきりの様子で、隣の部屋で練習させて貰っても全然気にしない様子。
鍵盤の横には象牙でできたギリシャ神話に出てきそうな顔の彫刻などがあって、本当に博物館にあってもおかしくないような素晴らしい楽器です。でも、300年以上たっている為やはり2,3ミリの薄い響板などはバリバリに割れていたりして、どこまで昔の状態を残して、修復するのか・・というのもいつも修復家の考えやセンス、腕前によるのですが、できるだけ昔の素材を残す方が再現する音色が近いのでは?と思いますが、これも賛否両論です。

アントワープにある350年前に大変栄えた有名なチェンバロメーカールッカースの本物のチェンバロで、いまだに修復されていないチェンバロもありますが、それはやはり貴重なインフォメーションとしてありのままの状態を保存しているわけです。世界中のチェンバロ製作者はこのような昔のオリジナルのチェンバロの細部に至るまで研究して新しく自分で作る分けです。

話が飛びましたが、友人の制作家のアトリエには、もう1台ショパンの愛したらフランス製のプレイエルというグランドピアノがあったので、ショパンはそのピアノで練習させて貰いました。プレイエルの本当に素晴らしいピアノの音色はまろやかで、今のピアノではなかなか出せない甘い音色がもうすでに楽器に備わっています。

1900年初頭のSPで録音されたアルフレッド・コルトーやメニューインと妹さんのフランクのソナタ・・・など、白黒のフィルムで残っていたりするのを見ると、譜面台の美しい曲線やピアノの足の形などから、このプレイエルやガボー、エラールのピアノを使用していたりします。

キラキラのニューヨークスタインウェイの音とはやはり違います。これは全くの好みであるけれど、昔のピアノは他の日常品とも同じように1つ1つ職人さんが丁寧に心を込めて仕上げていたから、暖かみのある音色があります。

無理に叩いたり、音色を作ろうとしなくても、もうすでにピアノの中に眠っている何とも言えない現代には失われた*音色*が眠っています。やはりピアノを繊細に感じ取れる人が演奏すると、そういう古いピアノから美しい音色を引き出すことができます。弾き手が優れているかとうかは、ピアノが教えてくれるわけです。人ではないのでとても正直です。

フォルテピアノは10年以上前からずっと惹かれていたが、実は手をあまり出しませんでした。
というのも、ピア二ストならヤマハのピアノ1台で済むし、チェンバリストも取り合えず1台あれば済みます。
しかし、この2台の楽器の間にどんどん発展して色々なモデルがあるフォルテピアノ(古いピアノ)は、何代も必要となります。

実際、モーツァルトの曲はチェンバロがまだある1750年頃ピアノが発明されてハイドン、モーツァルトがこぞって興奮してこの新しい強弱を表現できる鍵盤楽器(チェンバロでは弦を1本、2本、3本使用するかを選択して強弱を表現するけれど、ピアノのようにハンマーで叩いていないので別の構造)の為に作曲したから、やはり5オクターブのピアノで弾くべき・・・となります。

ベートーベンのソナタ32曲を見てみると、ソナタ1番は1795年に、32番は1822年に作曲され27年の歳月が流れています。この間にピアノはどんどんと改良、変化して新しいモデルがイギリス、ドイツ、フランスで開発され、ベートーベンなど優れた作曲家には最新のピアノがプレゼントされたりあしました。

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パリ市庁舎近くのサンジェルべ教会。チェンバロの素晴らしい名曲を残したクープラン家族がオルガ二ストをしていたことで有名。

その為、ベートーベンも以前よりも音域も増え、強弱やペダルも5つくらいあって(今は3つなのに当時はシンバルや打楽器がピアノの中に内蔵されているのものあり、トルコ行進曲などに使ったりします)想像力をかき立てられ、どんどんと彼の音楽も新しいスタイルが生まれました。

そんなこんなで、やはりベートーベンのソナタも全て1台のピアノで弾くことは無理です。鍵盤が足りなかったり、時代が合わなかったり・・・

ということで、イタリアやドイツなどの大変貴重なコレクターのシャトーや音楽財団には、7-10台にもおよぶ違う時代のピアノがあります。

そして、最高の贅沢はその250年ー100年前のピアノでピッタリのその時代にあった曲を演奏するのです。
その為、フォルテピアノでコンサートする際は、モダンピアノのように弾きたい曲をプログラムするのではなく、まずどの楽器を使用するのか~どの時代が合うか~楽器の良さを引き出す曲~ホールの大きさ~などと逆に楽器の可能性から考えます。あまり大きすぎる空間でも楽器の良さが伝わらないのでサロン風の方が良かったりもします。

または、ショパンのプログラムを演奏したい場合は、ショパンの愛したプレイエルが借りれるか探さなければいけません。

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サンジェルべ教会内のオルガン

本当にまあ面倒といえば面倒なのですが、ピッタリの楽器でその曲を演奏した時には、どこかしっくりいくし、作曲家の実際に聞いていた*音*やタッチ、世界観をピアノを通して知れることは、現代に生きる私たちにとって本当に貴重なインフォメーションだと思います。

なので、できるだけオリジナルの楽器を見れたり、弾かせてもらえる機会はある方が、そういう経験が宝となり新しいピアノを弾いても、この時代はこういう音だったかな・・・という記憶が体の中に残るわけです。

本当に気が付いてみると日本人なのにヨーロッパの古い楽器でその時代の音楽を演奏することに興味を持っているというのは、おかしなことかもしれません。

それは、きっとフランス人が日本の*茶道*などに惹かれて京都に住み、日本語を話し、千利休の使った茶道具を見て感動しているのと似ているのかな?なんと思ったりしますが、何人でも素晴らしいものは感銘するのだと思います。

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セーヌ川の夕日

昔、小沢征爾さんがクラシック音楽はあなたにとってどういうものですか?とインタビューされた時にこう答えたとおっしゃってました。

N,Yの汚いアパートから見た夕日がきれいだった。

ザルツブルグの丘から見た夕日もきれいだった。

川崎の海で見た夕日もきれいだった。

クラシック音楽もそんなものかな?と。

きれいと感じる心に国籍もないのでは・・・と。
そして、ご自身を日本人としてどこまで本場のヨーロッパでやっていけるのか、実験中なんですよ。と

こりゃ~~~すごいな。と大学の頃に思いました。私にとってもチェンバロとフォルテピアノはそんな理屈抜きに惹かれたものでしょうか。

本当に凄い方は、全然偉ぶらないのがいいですね。でも、小沢さんとバッと正面で合った視線はそれはそれは強烈で、電気ショックみたいに感じましたが、指揮をしている時はもっと集中した視線で*ここ!*なんて言われたら、固まっちゃって弾けなくなりそうですけど。(苦笑)

でも、指揮者の方は、そういうカリスマを持っている方が多いのでしょうか。そうでないと100人の人間の作る音や空気を混ぜ、調合できませんね。

では、今日はここら辺で。
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今、ピアノの初版譜(ファクシミリ)を調べていて面白いものがあったので、Upしてみようと思いました。

現代に生きながらもチェンバリストやフォルテピア二ストは、17,18世紀の作曲家の思い描いていた世界や実際に演奏していた*音*に少しでも近ずきたいと思って、当時に使用されていた楽器に辿りついて演奏している人が多いと思います。

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15世紀くらいの楽譜

そのせいか、古楽を専門にしている音楽家は頭の中は、16世紀のイタリア音楽や17世紀のヴェルサイユ宮殿のルイ王朝の時代に栄えた音楽の様式や装飾など・・・モーツァルト時代のピアノの構造はこうだけど、もうベートーベンの後期にはさらに開発されてタッチやアクションが異なり・・・


というような内容で一杯だったりして、パリや東京の大都会に住んでいてもちょっと一風変わっている人も多いでしょうか。


私は、ピアノからチェンバロの音色に何となく惹かれて始め、*目から鱗!!!*のように知らないことがありながらバッハなど何も理解せずにただ弾いていたのに気が付き、これはいかん!とイロハからチェンバロをやりたいと思ったのですが。

よくバロック音楽に没頭している音楽家やバロック愛好家は、往々にして*山から出てきたような!*髪の毛ぼーぼーでお風呂も1週間入っていないような?!でも、頭の中はテレマンやバッハで一杯のような、いわゆる*オタク*な人に出会うことが少なくありません。

しかし、良い意味でこの*オタク*になるというのは、もしかしたら必要不可欠では?と思います。

私は、この*オタク*度が足りないのでは?と今でも思いますが、良い意味で実際に*オタク*にならないと
2009年に生きているのに1700年のパリではどんな音楽様式だったのか・・・なんて自然に分かるようにはならないわけです。

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ヴィヴァルデイ:ヴァイオリンとチェンバロの為のソナタ表紙

17世紀、18世紀に出版された銅板画のチェンバロ、ピアノやフルートなどの教則本を昔のフランス語で母国語としてスラスラと読み、吸収して演奏に生かしているフランス人を見ると、う~~む。これは、日本人の私にはちょっと無理!?とも思いますが、そうして実際の演奏に生かせるのは、まるで古い推理小説の謎解き!?のように1つ1つ理解していき、300年前の楽譜との距離が少しずつ近くなる感じがします。

今では、ほとんどの主要の図書館の貴重な初版譜などもそのまま出版されているので、気軽に練習やコンサートに使用できますが、まだまだピアノを普通に習った人たちが、あえてショパンの自筆譜の楽譜まで手に入れて、自分で照らし合わせて弾いているか、というと少ないかもしれないですが、素晴らしい音楽家は皆さん大変研究熱心で、本当に詳しく理解した上で演奏しているようです。

チェンバロでフランス音楽など実際にああでもない、こうでもない、と18世紀の装飾音符の表と照らし合わせながらやっていくうち、何となく雰囲気が分かってきます。そして、日常見ている気まぐれで自由が大好きだけれど、自分勝手みたいな・・・フランス人の気質とどこか共通しているように思えてなりません。

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J.Sバッハ:ヴァイオリンの為のパルテイータ2番の自筆譜

余談ですが、先週2年間お世話になったアムステルダムのチェンバロの先生がマスタークラスとコンサートをしにパリに来て、一生懸命フランス語でレッスンしたりしていましたが、根本的な気質が全然フランス人と違いますね。

私は、妙に正直で真面目に生きているオランダ人の音楽家達と数日過ごして懐かしく、嬉しかったのですが、パリの音楽家はどこかふわふわしているわけです。優雅さやエレガントさを大事にして生きている人たちです。オランダ人やドイツ人は地に足を付けて、余計なものはいらないけれどしっかりと、質素に本質を見て生きているという感じです。

先週、パリに6年留学して日本に帰国した友人がパリに来ていたので会ったのですが、

*空港降りて、もう香水の匂いがプンプン!あ~~。パリに来たって感じ。*

と言っていましたが、その通り。日本でもこんなに香水の匂いもしないし、オランダでもないですね。

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J.Sバッハの長男:W.F.バッハの自筆譜。お父さんの楽譜とまた違いますね。

不思議と服装などもその町の雰囲気によって異なりますが、アメリカはおじいちゃんでも元気に真赤なT-シャツに半ズボン、サンダル。そして大きな声で楽しそうに笑っています。

が、パリを訪れているアメリカ人がいると、電車の中でもなぜかすぐにみんな気が付いてしまいます。
これは、きっとフランス語のシュワシュワ シュワ~~~と風の様に聞こえる音の中で、妙にあのアメリカ英語が浮いてしまうんですね。母音がはっきりしているからでしょうか。

電車の中で色々な国籍の人が乗っていると、大体雰囲気でスペインかイタリア人かな?アラブかモロッコかな?オランダかドイツかな?と見当がつきますが、話している内容が分からなくても、*音*と雰囲気がどこかコネクトしている感じで、見ていて結構面白いですね。

たまに日本語も分かるフランス人が居たりするので、私も(日本語を秘密の言葉として)話の内容を理解されていないと思って話していたりすると、とんでもないですね。(苦笑)日本に帰ると気を付けるのですが・・・

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Fanny Henselの自筆譜
旦那さまのデッサン付き!


話が随分それましたが、使用する楽譜などもできるだけ作曲家が生きていた時代に出版された初版譜(ファクシミリ)を使用して古楽の人たちは演奏しています。

作曲家の手を離れた後は、出版社が勝手に題名を付けたり(月光のソナタなども)、音楽の表記や細かいアクセント、fp記号なども編集者が勝手にこう思う。と提案して余計な記号を一杯付けてしまうので、だんだんと元の形から離れて行ってしまう・・・

一番良いのは、作曲家に電話して*ここはどう弾くの?*と聞けたら最高ですが、皆様随分昔の方たちなので・・・(カツラをかぶっている時代ですものね。)現存する彼らの時代の資料を手に入れるしかないです。

ご紹介したかったのは、私も知らなかったのですがショパンと同時代のFanny HENSELというドイツ人の女流作曲家がいらして、12ヵ月の四季をテーマにした曲を作曲してその楽譜に有名な画家だった旦那さまのデッサンが書いてあります。

楽譜にこんな絵を描いてしまう想像力にビックリ!

今でも筆跡で性格が出るように、楽譜からも作曲家の性格が何となく伝わってきたりしますね。
私は、昔から字が下手なのですが、アバウトな性格が出ているような・・・気がします。
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有名なグランプラス

昨日、ブリュッセルからパリに高速電車タリスで戻ってきました。
梅の花も咲き始め、春を感じさせる良いお天気に恵まれました。

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なんと、1時間20分で国境を越えてパリーブリュッセル間を気軽に行き来することが出来ます。
30分置きに電車も出ているので、とても便利です。

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仙が咲き始めた、バジリカ教会前

さて、2月22日(金)は、ブリュッセルの楽器博物館で2台のフォルテピアノを使用して
コンサートをさせて頂きました。

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モーツァルトのファンだジーとベートーベンのソナタは、Robert Brown氏の作ったWalterのコピーで演奏しました。

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大変繊細な楽器なので、前日にも練習をさせてもらい、タッチや音色に慣れる時間を貰いました。

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そしてショパンの愛したプレイエルというフランス製の1843年のオリジナルのフォルテピアノでは、ショパンのノクターンを演奏しました。

特に初期のフォルテピアノはチェンバロと同じくらい繊細なタッチで、細やかな表情を必要とするため、大変神経を使います。


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ピアノに20年親しんだ後、最近の10年はチェンバロのみに集中していた私にとって、再びこのように歴史的なフォルテピアノを通じてピアノのレパートリーを弾けると言うのは、とても大きな喜びです。

先週、練習させて貰いに行った時は、閉館日の月曜日でしたので、楽器の調律や調整をするおじさんと、どんなオリジナルがここにはあるんですか?と話していたら、じゃあ一緒に行ってちょっと、弾いてみる?
というなんとも嬉しいサプライズ。

初めてモーツァルト時代のオリジナルのフォルテピアノ:シュタインや、べーゼンドルファー、ショパンが弾いたという1830年代のプレイエルを弾かせてもらい、その素晴らしい音色に魅了されました。

ヨーロッパの楽器博物館や個人のコレクター宅には、まだまだこのような素晴らしい名器が沢山保存されています。

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大変美しい音色のプレイエル1843年

これらの楽器に触れることにより、200年、300年前の作曲家が実際に耳にしていた*音*を実際に聞き、楽譜や本では知ることのできない本当の*音*に出会うことができます。

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イースター向けのうさぎのチョコレート。ベルギー1おいしいと言われるピエール・マルコリー二


1台1台がまるで人の様に、違う音色やタッチを持っています。それらに会いに行き、同年代の作曲家の曲を弾いてみて発見することは、何よりも貴重なインフォメーションです。

これからも、色々な楽器に出あって多くの*音色*に触れたいと思っています。

d0070113_23234380.jpg色とりどりのうさぎチョコ!
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1月のボストンコンサートが終わった後に、フォルテピアニストの友達とボストン郊外にある、
素晴らしいフォルテピアノのコレクションを見に行きました。

このコレクションは、7年前にボストンに住んでいた頃にも訪れた思い出の場所ですが、
再び訪れて、20台ほどにも上るフォルテピアノを1台1台弾かせて頂き、大変感激しました。

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フレデリックさんと奥様2人で始めたコレクションが数十台になり、多くの方々の寄付金により、今では立派なMusuemとなりコンサートが行われたり、一般公開されています。


17世紀、18世紀のはじめに栄えたチェンバロより、18世紀半ばのハイドン、モーツァルト、ベートーベンにより開発されたばかりのフォルテピアノの為に多くの曲が作曲され、ピアノも20世紀初頭まで発展し続けました。

フォルテピアノとは、今のモダンピアノ(黒いヤマハやスタインウェイ)よりも以前の様々な時代の古いピアノの事ですが、今のピアノとは異なる柔らかな、1台1台まるで人の様に個性のあるピアノです。

単に古いピアノと言ってしまえばそれまでですが、1920年以降の産業が発達して大量生産が世界中で始まるまでは、1台1台ピアノも手作りで大切に仕上げられていました。

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Broadmann 1800-1805 Vienne

1795年のモーツァルトがピアノをソナタを作曲し、ピアノが盛んになり始めた頃のウイーン式初期ピアノから1907年の大きなBluthnerのコンサートグランドピアノまでの間のピアノの発展を1台ずつ見て、弾くことができます。

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シューベルトやメンデルスゾーンの時代のウイーン式フォルテピアノの部屋。
ここには、大変貴重なシューベルトの愛したピアノメーカー、Conrad Graf 1828もあります。とてもまろやかなな音と軽やかなタッチです。


大きなメインの部屋を含め、4部屋に分かれて時代ごとにフォルテピアノが所狭しと並べてあります。フレデリックさんの自宅はすぐ横にあるのですが、そこにもまだ修復中のピアノなどがあり、全て数えたら40-50台はあると思います。

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Bosendorfer 1828-1832

今でも、ドイツで製造中の名門ピアノメーカーBosendorferのフォルテピアノ。初期、中期のBosendorferはとても柔らかな素晴らしい音色で、今のピアノとは全く異なる響きです。

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Bosendorfer 1877

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Bosendorferのプレート

そして、ブラームスの曲を弾くのにピッタリのウイーンの製作者Streicherも2台異なった時代のモデルのフォルテピアノがありました。

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Streicher 1846 とその後ろには Pleyel 1845

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Streicher 1868

このように上の2つを見比べてみても、譜面台の装飾や音域も異なり、構造も発展している為、それに伴い音色も1台1台個性があります。


そして、パリのフォルテピアノメーカーである、Erardはリストやドビュッシー、ラベルに愛されました。フランスらしい色や雰囲気を感じさせるフォルテピアノです。

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Erard 1839

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Erard 1877

そして、ショパンの愛したフォルテピアノメーカーである、プレイエル社の1845年のフォルテピアノもありましたが、エラールとは異なる柔らかく包み込まれるような音色で大変魅力的です。
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