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楽譜/La partition

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音楽家にとって楽譜とは、唯一作曲家とのコンタクトができる大事な資料です。
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(5月に演奏するジャン・フィリップ・・ラモーのコンセール(1741年出版、パリ)とソロのチェンバロ組曲(1728年出版、パリ)左側に書かれたフランス語の説明では王様への献呈の言葉が長々と書かれている。)

生きている作曲家であれば、分からないことがある時に何かしらの手段で聞くことは可能かもしれませんが、ほとんどの偉大な作曲家は既に違う時代に生きた人達です。

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子供の頃は、楽譜は*音符通りに間違わないで弾くもの*という認識が強かったですが、チェンバロを弾き始めてから、その音符の裏側に秘められている意味、作曲家の意図というものを読もうとする観点になりました。

そういった場合、ただ音符を見ても勿論分からないこともあります。

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例えば、時代背景や国の情勢、文化やどんな趣味が流行っていたか。
これは、音楽だけでなく絵画や建築、文学、ファッションなどからも当時のスタイルを知る手がかりがありますね。

そして、バロック時代の作曲家の多くはまだ王様や権威のある貴族に仕えていたので、出版できるということは本当に限られた*王様のお気に入り*の作曲家でなければ、許可が下りなかったようです。

古楽の演奏家は、できる限り作曲家の意図をくみ取ろうとするので、もし17世紀に出版された初版譜があればそれを実際に使って演奏したり、参考にします。

作曲家の手描きの楽譜があれば、一番作曲家の息吹を感じやすいですね。
筆跡や音符から性格もこの人は几帳面とかすごい汚くて読めない(!)とか分かりますし、時にはグチャグチャと書き直して、他にもどんなアイデアがあったかを伺い知ることができます。

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現代に出版されている楽譜と照らし合わせると全然違ったり、編集者の勝手な解釈で変更されていたりもするので、作曲家の思い描いていた世界を忠実に再現するのに、楽譜はとても大事な手がかりとなります。

古楽演奏者はよく*楽器の旅*をして世界中に残された素晴らしい名器の*音*を求めて色々な博物館やプライベートコレクションを見せてもらいに行ったりします。
楽譜もパリの国立図書館やヨーロッパ各地にはまだ、現代の出版社が出版していない埋れた作品が眠っていたりする為、機会がある時には図書館へ行って貴重な文献を見せてもらったりもします。

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セバスチャン・ル・カミュの初版譜。1678年。(ヴェルサイユ宮殿の宮廷音楽家のこのファクシミリから素敵な曲を選んで10月に演奏します。)


始めは何となく複雑なことを勉強しなければと思っていましたが、こうしてヨーロッパに住むと作曲家の暮らした場所がすぐそこにあったりして、今まで本の中だけだと思っていた世界が現実と結びつき、本当にわくわくしてしまう楽しさがあります。

5月のコンサートで演奏するラモーも、パリのパトロン宅で1日に3回ものコンサートを毎日していたようです。
彼がオルガンを弾いていた教会が、実は私が去年に住んでいた場所の2本隣の道だったりして、改めて驚きました。

今度、ラモーにゆかりのある住所を訪ねてみようかと思います。


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