終わったと思ったら始まり/C`est la fin et le commencement!

この数日は、本当に11月末とは思えないほど穏やかなお天気が続いています。
去年の今頃は白い息で12月始めには初雪が降り10回くらい降ったのを覚えています。

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パリ生活も残り1週間になりました。
『録音が終わった!と思ったら、それはまだまだ始まりだよ。』

と数年前に同じゴルドベルク変奏曲をオリジナルのヘムシュで録音した友達に言われました。

『え?!』と思いましたが、本当にその通り。

2日前にエンジニアにバッハ:ゴルドベルク変奏曲とラファエル&パスカルとのDuportのチェロソナタのCD合計11枚を貰いました。

何でそんなに多いのか?

バッハ2枚もDuport2枚も今のままでは3分多くて1枚(80分)のCDに入らないのでどこかの楽章をカットしないといけません。
その4枚+バッハは特別にお願いして全てのテイク(合計7枚=7時間に及ぶ350テイク)も貰いました。ということで11枚を聞いてますが、収集付きませんね!(笑)

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録音した友人の何人かに教えて貰ったのですが、CDを作るもとのマスター(master=CDを作る全ての録音テイクなど)を音楽家が100%権利を貰っておくことがとても大事なんだそうです。

後に例えば5分だけ何かに使いたい、別のCDに入れたい、または数年後にもう1度編集しなおしたいと思っても、レコード会社が一言『NO』と言えば何も出来ないそうです。もとは、この条件が契約書に書いてなかったので、特別に追加して貰いました。

エンジニアにも通常音楽家で全てのテイクを聞きたいというの人は居るか?と聞いたら、ほとんどがお任せで少し気に入らない点を言って再編集でOkのようですが、たまに、物好きな人、細かい人は全部のテイクを聞きたいと言われるそうです。

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エンジニアはとても慣れているので、すでに録音中にどこの部分はどのテイクが良かったかメモしているのでそれをもとに350テイクから編集すれまで3日仕事で編集したそうです。

でも、慣れていない私は80分の通し&その各部分の気に入らない部分をメモして、それを探す為に他の全てのテイクを聞き続け、メモし、分かりやすいように色鉛筆で変えたりする作業は膨大な時間がかかるわけです。
まあ、気長に1―2週間聞いていこうと思います。最終的には1月末には全て仕上げて2月末ー3月にリリース予定ということですが、間に合うでしょうかね?

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始めはノートに各ヴァリエーション1-30変奏曲まで書いていたのですが、チェンバロはとても細かいので、

3拍目の『ド』の前のアーテイキュレーションが足りない・・・

とかいちいちメモしていられない&エンジニアがフランス人なので日本語だとぱぱっとメモできるのですが、これまたフランス語で書くのが面倒・・・と言ったら怒られそうですが。本当です。(苦笑)

ということで、楽譜を全部コピーして1部用意して編集用に使うことにしました。
そして、書きたいことを全部書いてエンジニアに送り、再度編集してもらいます。

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★編集をほとんど任せて、最終チェックだけ指摘する人
★始めだけお願いして後は今回の私の様にチェックして再編集して貰う人
★自分で全てのテイクから事細かに選んで自分で編集しちゃう人。でも、この友達はそれが専門でもないので、1年以上かかって少しずつやったようです。

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意外だったのは、Duportのチェロソナタの方が聞きやすいということでした。
私は、Continuo『通奏低音』で後ろで弾いているのですが、録音した時は毎回違う即興う毎日5-8時間していたので、本当に”脳みそ”がくたくたに疲れました。

しかし、そんなことを忘れて聞いてみると、ラファエルのソロのメロデイーがとても気持ちよく歌って、その後ろで弾いているチェンバロとパスカルの伴奏のチェロは邪魔しないちょうど良いバランスです。弾いた3人ともわりとハッピーなできになりました。

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しかし自分のバッハ:ソロとなると耳がキューっと集中してしまいます。

1音ずつのアーテイキュレーション
フレーズ、テンポ、残響
1本の弦で弾いている時は綺麗に響いてるけど、2本、3本のバランス、音色など
左でのバスがはっきり聞こえにくい・・
これは、チェンバロのVoicingがそうだったから?
部屋の残響?
マイクが遠すぎた?
高音&低音のバランス?
音が始まる前の静寂を聞くと、(ぶ~ん)と雑音があるような?これは取り除けるようですが、いわゆる音のクリーニングをやらないといけないようです。
ルセ、その他2人の同じルッカースの録音を聞き比べて、このチェンバロと部屋が普通のチェンバロよりもかなり残響があるの様ので、これ以上響きを足さないなど・・・

気になってしょうがないわけです。

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ということで、隅から隅まで気になりますが、長い時間をかけて準備をしたプロジェクトですので、エンジニアには厄介な?音楽家かもしれませんが、妥協をしないで納得する『音』になるまで練ろうと思います。

しかし!パリー東京の距離で理想の音を作るというのは、本当に難しいですよね。
ましてやフランス語のメールなどでそんなに微妙なニュアンスを伝えることが出来るんでしょうか?と思いますが、もともとクリスマス前くらいに1回目の編集をして『メールで送るよ』と言われて、
『メール?!』

みたいな。勿論、伝書鳩で届けて貰うつもりはないのですが、数千キロ離れてメールで『音』を貰い、聞いて、どこが嫌とか『メール』でコミュニケートするの?

ということで、せめて私がパリに居る前に聞いて話し合いたいということで、早めに編集してもらいました。

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結果的にやはり自分で全テイクを聞いて、私のヴァージョンで選択した2回目の編集を12月にして貰うようにこれから選びますが、彼女のヴァ―ジョンと比べた時に、きっと『何を良いとするか』という価値観の違いが出るのではないでしょうか。ある意味、面白いですよね。

同じ素材からどう料理するか、塩コショウもセンスみたいな。

来週の帰国までにジャケットの写真、文章をまず日本語で書いて英語、フランス語に翻訳し、それをネイテイブの友達やフランス語の先生にチェックしてもらってデータを揃えてデザインしてくれる友人に渡さないといけません。

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ゴルドベルクのリサーチ&論文は10年前のアメリカの修士論文で取り上げ、1年かけて実際に演奏するのも学んだのですが、MITやボストン私立図書館へ行くとバッハ関連の本は積み上げれるくらい40-50冊はあるわけです。多分、一番本が多い作曲家では?と思います。


その為、曲目解説を書くと数ページも及びx3か国語=3倍のページ数になる為、今回はどうしてこの曲を選んだかなどメッセージを書き、ルッカースの説明、プロフィールの3つに絞ることにしました。

あとは、ノイシャテル博物館より提供して頂くチェンバロの写真を随所に入れて、チェンバロに興味のある方も初めて聞く&見る方にもこの貴重な1632年のチェンバロの詳細を楽しんで頂きたいと思います。

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私のお気に入りは、チェンバロの先の方に描かれている猫ですね!
あと鍵盤の周りには3つのお猿さんが楽器を弾いていて、お陰で録音中も音楽=楽しむことというのを目にしながら助けて貰った気がします。

それでは、ここら辺でまた聞きます・・・結論は出るんでしょうかね。
数学の『確立』みたいで350テイクをどう組み合わせるかを考えると数千の例ができそうですが・・・
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